ライブ配信での楽曲使用(1)ー 管理楽曲の現状


さて、今回はちょっと微妙な話なのでマジに行きますよ。最初にお断りしておきますが、これは2012年12月30日現在のわたくし「うめ」の見解です。この話をすっかり信用して誰かに訴えられても責任が持てません。でも、私はこう理解しています。だから、大丈夫だと信じています。

それから、ここでの説明は権利管理団体が管理している楽曲の非商用利用の場合のみを対象に説明します。それから、インディーズやクリエイティブ・コモンズなどの話は次回します。

ライブ配信の楽曲使用はどうなっているのか

まず、現状認識から始めましょう。ライブ配信でBGMを流したり、楽曲をかけたりするのってステキですよね。BGMがあるだけで配信のムードはぐっと良くなるし、なんだかプロっぽい感じも。それに、カラオケも歌いたいですよね。実際にいろいろライブな配信を見てみると、CDをかけたり、ラジオやテレビの音声を流したり、カラオケボックスから配信するなんてのをよく見かけます。これ、大丈夫なのかなと少し心配になりながらいつも見てます。

Ustream

Ustream は、2010年7月6日に「USTREAM Asia、日本の著作権管理事業者と、楽曲の利用許諾に関する包括契約を締結」というニュースリリースを出しています。これによると、「Ustreamの利用者は、JASRAC、イーライセンス、JRCが管理する楽曲を演奏することや、演奏に合わせて歌う映像などを配信できるようになります」と書かれています。良く読めば分かりますが、演奏することが許されているだけです。CDをかけたり、カラオケで歌ってよいとは言っていません。アカペラや、自分でギターを弾いて歌うといったことが許されているだけです。

そもそも、JASRACなどの権利管理団体は CD メディア全体の権利は管理していません。「歌詞」「曲」「実演」などの権利だけを扱っています。もちろん、JASRACと会社や個人で利用契約して楽曲を利用することはできますが、正直なところ面倒な作業です。個人の趣味の配信などであれば、そこまでしませんよね。また、権利団体のデータベースに登録されている楽曲であっても、配信不可になっていれば契約なしでは利用できません。

一方、JRCに関してはBGM利用可能な楽曲のリストが提供されています。これはとても良いことですね。そこから選べば、堂々と配信できるのですから。なお、Ustream に対して配信した楽曲のリストを報告する義務があります。

  • USTREAM Asia、日本の著作権管理事業者と、楽曲の利用許諾に関する包括契約を締結
    http://www.softbank.co.jp/ja/stc/group_sup/20100706_01.pdf
  • 音楽をご利用の方へ(Ustream)
    http://www.ustream.tv/japan/copyright/overview
  • USTREAM利用可能音源検索データベース利用規約
    http://www.japanrights.com/ust/terms.html
  • 「USTREAM」におけるJRC管理作品のご利用について
    http://www.japanrights.com/ust/index.html

YouTube

YouTube はどうでしょうか。原則的には、ITmediaニュースの報道から「ユーザーがJASRAC管理楽曲を演奏したり、歌ったりした動画をYouTubeに投稿できる。CD音源やプロモーションビデオをそのまま投稿することはできない」という理解でよさそうです。なぜ「よさそう」と書くかといえば、YouTube はその件についてウェブ上で明確に書いていないからです。YouTube と JASRAC の包括契約では、すでにアップロードされている違法なコンテンツの扱いが問題になったといわれています。そのため、法的なリスクを避ける目的で契約内容を非公開にしているのではないかと推測しています。

内容的には、「動画投稿(共有)サイトにJASRAC管理楽曲を含む動画をアップロードすることについて」にあるように、「JASRACの許諾の範囲に含まれるものは、JASRAC管理楽曲を、自身で演奏したもの、自身の演奏に合わせて歌唱しているもの、MIDI等のソフトウェアで自作したもの等(下記参照)が対象」であるということです。

■利用できる音源
○ 自身で演奏したもの
○ 自身の演奏に合わせて歌唱したもの
○ 自身で制作したMIDI
○ サイト運営事業者がレコード会社等から許可を得ている音源 等

■利用できない音源
× レコード会社等の許可を得ていないCD音源
× カラオケ事業者の許可を得ていない伴奏音源
× アーティストのプロモーションビデオ、TV番組、映画 等

付け加えれば、誰かが演奏したJASRAC管理楽曲を録画、録音したもので、演奏者が許諾したものなども利用できると考えられます。

  • Youtube 著作権センター「よくある質問」
    http://www.youtube.com/t/copyright_faq
  • 動画投稿(共有)サイトにJASRAC管理楽曲を含む動画をアップロードすることについて
    http://www.jasrac.or.jp/network/side/upload.html
  • YouTubeがJASRACと契約 演奏動画、投稿可能に(ITmediaニュース、2008年10月23日)
    http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0810/23/news094.html
  • 動画投稿(共有)サービスにおける利用許諾条件について
    http://www.jasrac.or.jp/release/07/07_4.html
  • グーグルと音楽著作権管理会社のJRC、「YouTube」で包括利用許諾契約(INTERNET Watch、2008年3月27日)
    http://internet.watch.impress.co.jp/cda/news/2008/03/27/18972.html
  • 「eyeVio」がJASRACと契約、JASRAC管理楽曲の演奏動画などを投稿可能 (INTERNET Watch、2008年2月12日)
    http://internet.watch.impress.co.jp/cda/news/2008/02/12/18418.html

ニコニコ動画、ニコニコ生放送

ニコ動・ニコ生も見ておきましょう。Ustream、YouTube は海外のサービスですが、ニコ生は和製ライブ配信サービスですから、もう少し細かく規定していそうです。

探してみるとさすがです。ガイドラインはきっちりと書かれており、許諾楽曲検索機能もあります。要約すると、「JASRAC等の管理楽曲を、自身で演奏したもの、演奏して歌ったもの、DTM・MIDI・ボーカロイドで出力したものはOK、CD音源を利用することについては一部例外を除きNG」ということで、他のサービスと同じです。利用する際は、番組登録時の情報入力が必要です。

許諾楽曲検索を利用してみると、エイベックスのアーティストである浜崎あゆみや、アニソンのランティス等が名前を連ねており、かなりのCDが登録されています。楽曲利用でも、一歩先を行く対応に感心しますね。

  • ニコニコ動画、JASRAC曲の演奏動画が投稿可能に(ITmediaニュース、2008年04月01日)
    http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0804/01/news100.html
  • 音楽著作物及び音楽原盤の利用に関するガイドライン
    http://ex.nicovideo.jp/base/license_guideline
  • ニコニコ動画 許諾楽曲検索
    http://license-search.nicovideo.jp/

ツイキャス-TwitCasting

最後はツイキャスです。「ツイキャスでは JASRAC との包括契約により、使用した楽曲をツイキャスにご報告いただくことで JASRAC 管理楽曲を無料にて歌ったり演奏したりすることが可能になりました」との記載があります。対象が JASRAC だけである点に注意が必要ですが、他のライブ配信メディアと同様の扱いのようです。報告する専用のフォームが用意されています。

  • ツイキャス上での楽曲配信について
    http://twitcasting.tv/indexhelpsound.php
  • JASRACに行ってツイキャスの包括契約を結んできたときのメモ(2011年04月12日、管理人@Yoski)
    http://blog.myrss.jp/archives/2011/04/jasrac.html

まとめ

非商用のライブ配信における著作権管理団体に登録された楽曲の扱いについてまとめておきましょう。原則としては、次のように考えればよいでしょう。

著作権管理団体が管理する曲
演奏、歌唱は個別の契約なく許される。CDをかけること、PVを使うこと、アーティストの写真やジャケット写真を使うことはできない。
利用可能なCD音源などの楽曲
Ustream、ニコニコ生放送、ニコニコ動画にはかけてもよいCDがある。データベースで検索可能。ただし、BGMにしたり、そのままかけたりするだけ。加工してはいけない。
利用報告
利用したら報告するのが原則である。各サービス参照。

カラオケはどうなっているのか

ツイキャスやニコ生ではたまにカラオケ配信を見かけます。これはどうなっているのでしょうか?JOYSOUNDの店などで一部解禁されていますが、原則としてはカラオケ配信はできないというのが現状のようです。ネット検索しただけなので、ちょっと自信がないですが。また、オンラインのカラオケサービス等を利用しての配信もできないと考えたほうがよさそうです。詳しい方がいましたら、コメントで教えてください。

  • ニコニコ生放送が配信できる『ニコカラルーム』がオープンしました!(JOYSOUND、2012年08月29日)
    http://shop.joysound.com/news/nicokararoom/

楽曲利用はどうなっていくのか?

さて、権利管理団体は楽曲の利用、演奏・歌唱を認める方向でライブ配信メディア・動画配信運営会社と包括契約を進めてきています。これは、音楽ビジネスのネット利用のグレーゾーンを明確にしたという点で、ユーザにとっても利益になることです。Ustreamやニコ生が権利者にお金を払っているのだから、正々堂々と利用できるというのは良いことですよね。

そして次は、やはりカラオケだと思う。カラオケ配信は、原曲CD等の音源の直接的な利用に比べれば権利を侵害する可能性は低い。しかも、カラオケの演奏者、編曲者に対して対価が支払われれば、それもとてもよいことです。ライブ配信で利用できるようになれば、ユーザの歌いたい思いも高まり配信ビジネスの広がりにもつながると考えられます。権利侵害が広まるのを苦々しく眺めるよりも、音楽関係者にはそこにビジネスチャンスを見つけて前向きになってほしいですね。すでに動きはあるようですが。

最後に蛇足ですが、ユーザに分かりやすく権利間関係をきちんと説明しているニコ動やニコ生ほど、権利侵害していると思われるコンテンツが多いと感じられるのは皮肉なことですね。このようなグレーの状態も解決できることを望みます。配信者がビクビクしながらというのが一番良くない状態です。新分野のビジネスというものはそういう性質を持っていることが多いとは思うのですけれど。

この続きでは、インディーズの楽曲やクリエイティブコモンズの曲の話を書きます。そちらが本題のつもりなんですよ。

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